”壁の穴”から21世紀の教育を考える

 私は現在「地方に住む年配者と世界の日本語学習者を繋ぐ」をコンセプトにした、Wasabiという語学学習サービスを運営しています。が、実はこのアイディア、私のオリジナルではありません。海外で既に実例があるものを、日本語教育という分野で真似させてもらっています。"Hole in the Wall(壁の穴)"というプロジェクトが、僕がWasabiを始めた大きなきっかけでした。この記事では、"Hole in the Wall"と、その後進である"School in the Cloud (クラウド上の学校)”プロジェクトを通じて、21世紀の教育について考えてみたいと思います。

 

 自己学習環境、SOLE (Self-Organised Learning Environment)

 壁の穴プロジェクトについて、詳しくは上の動画を見てください。このプレゼンは2013年のTED賞を受賞しています。動画は20分ほどあるので、見る時間がない人のために、WIREDが書いた記事の一部を下に引用します。

わたしがいまから13年前にインドで手がけた実験「Hole in the Wall」は、インドのスラムの街角にコンピューターを置いて、子どもたちに自由に使わせるというものでした。そこでわたしは、「子どもは人に教わることなく学ぶことができるか」という問いを検証しようとしたのです。結果はこうです。「何人かのグループになればそれができる」。次に出てきた問いは、コンピューターの使い方を学んだ子どもたちは何をするか、ということです。大方の予想は「ゲームなどで遊ぶだろう」というものでした。しかし、しばらくすると子どもたちはゲームに飽きて違ったことを始めます。そしてGoogleに行き当たるのです。そこで彼らは宿題の答えをGoogleで探し始めます。そこで次の問いが出てきます。「子どもたちは果たしてGoogleを通して何かを学んでいるのか」。研究の結果わかったのは、彼らは確かに学んでいるということなのです。

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 上は実際のその写真。しかもこれ、パソコンの設定言語は英語です。インドは第二公用語が英語とはいえ、スラムの子供たちは英語がわかりません。その状況下で、自分たちで学習を進めていくのです。驚きですよね?このプロジェクトは、環境さえ整えれば、社会的階層や国籍を問わず、誰でも学習を進められることを示唆していると思います。また、主体的に学習を進めることができるので、上手く活用すれば、それぞれが自分の個性や興味に合わせた内容を学ぶことができるようになるはずです。日本で教育といえば、学校に行って、椅子に座って、黒板を写す。わからないところは塾で復習する。そんなイメージが強いのでないかと思います。皆さん、そんな勉強が好きでしたか?そんな勉強を我々は21世紀も続けていくのでしょうか?

学校不必要論

 パソコンで勉強できるのなら、学校なんかもう行かなくていいじゃん!…こういう議論もありますが、この壁の穴プロジェクトの発起人であるスガタ・ミトラ氏は、イギリスとインドにそれぞれ学校を作りました。それがSchool in the Cloud (クラウド上の学校)です。ここでは、先生が生徒に何かを教えることをしません。代わりに、先生は生徒に想像力や興味心をかきたてる質問をします。生徒がその答えを先生に教えます。その質問は先生すら答えがわからない、もしくは決まった答えがないようなものです。例えば、How do we remember and why do we forget?(我々はどのように記憶し、なぜ忘れるのか?)のようなもの。あなたは答えられますか? 生徒は、同級生と協力し、インターネットで調べ、なんとか答えを考えます。下は実際のクラスの様子。日本語字幕はありませんが、雰囲気はわかると思います。

 

Self Organized Learning Environments from Open Lab on Vimeo.

 

 ああ、なんて面白そうなんだ…。予備知識の学習をどうしているのか気になるところですが、他の動画を見るに、インターネット上のコンテンツを活用し、自主的な勉強を促しているのでしょうか。それで効果が出るのか?という疑問も浮かびますが、スガタ氏はTEDのプレゼンでこう話しています。

周囲からこの方法はどこまで応用可能か聞かれるようになりました。そこで私は、ある非常識な提案をすることで、自ら持論を否定しようと考えました。バカバカしい仮説を立てたんです。それは「インド南部の村に住む タミル語話者の子どもたちは、コンピュータを置いておくだけでDNA複製の生命工学を英語で学ぶだろうか?」

結果は0点と予想していました。数ヶ月間コンピュータを置いておこうとも、どうせまた0点だろうから研究室へ戻り「やはり教員が必要だ」と、述べるつもりでした。インド南部のカリクパムという村にコンピュータを設置しました。DNA複製に関する様々な情報をダウンロードしておきました。私もほとんど理解できない内容でした。

 

子どもたちが駆け寄ってきて、

「何これ?」
「大事な面白い内容だよ。でも全部英語なんだ。」
「英語の難しい言葉や図や化学をどうやったら理解できるの?」
「見当も付かないよ。じゃ、もう行くね。笑」

 

数ヶ月そのままにしてテストをしたところ0点でした。その2ヶ月後も 子どもたちは 「何にもわからない」と言いました。その2ヶ月後も子どもたちは「何にもわからない」と言いました。

 

「まあ無理だろうね。」
「でも、何もわからないと思うまで 何日ぐらい頑張ったの?」
「あきらめてないよ。毎日見てる。」
「2ヶ月かけて何もわからないのに、何故まだ見てるの?」
「DNA分子の不適切な複製で疾患が起きること以外は何もわからないの。」
「(笑)」

 

そこでテストをしてみました。教育的に考えられない結果でした。0点から30点へ向上。猛暑の熱帯地域で木の下にコンピュータを2ヶ月置いただけ。 知らない言語で、10年先に習うような内容を学習してしまう、とんでもないことです。しかし、ビクトリア時代の基準では30点では落第です。合格まで上げるには あと20点必要です。

教師がいなかったので、代わりに子どもたちの遊び相手の22歳の女性会計士に頼みました。手伝ってやってほしいと言うと、彼女は「お断り」と答えました。「理科は習ったことがないし、子どもたちがあの木の下で1日中 何をやってるのかわからないから。」私はこう言いました。「お婆ちゃんになればいい」「どういうこと?」「後ろに立って、子どもたちが何をやっても 『うわーすごい!どうやったの? 次は?』 『私が皆ぐらいの頃はそんなのできなかったわ!』 と、お婆ちゃんが言うようにね。」

 

それを2ヶ月続けてもらったところ、成績は50点に跳ね上がりました。カリクパムの子どもたちは、ニューデリーの生命工学の先生がいる裕福な私立学校の生徒に並びました。

 

 どうでしょうか?スガタ氏はこれをThe Method of the Grandmotherと呼んでいました。(笑) 自己学習環境と、生徒の意欲をかきたてる仕組みがあれば、きちんと学習効果は出るのです。今の日本の教育は、教科書に書いてあることを生徒に教える、というのが主流です。皆が同じスピードで、同じ知識を習得することが求められます。小学校では、まだ習っていない漢字を勝手に使うと注意を受けることもあるそうです。

 学校が不必要であるとは僕も思いません。しかし、既存の窮屈なものがこれからの時代に合っているとも思いません。21世紀はとても複雑な時代です。急激な技術革新によって、社会は猛烈に変化していきます。子供たちの多くは、大人になったとき、今はまだ存在しない仕事に就くと言われています。そんな時代だからこそ、自主的に学ぶ力、他者と協力する力、答えのない問いに答える力、ITを活用する力、そんな力が身につけられる教育にシフトチェンジすべきでないのかと僕は思います。

Skype Granny

 スガタ氏の取り組みは上記だけではありません。教育は住む場所によってクオリティの差が出ます。発展途上国になればなるほど、公的教育が充実していることは少なくなります。また、田舎に行けばいくほど、優秀な先生は減ります。そうした問題に取り組んでいるのが、このSkype Grannyです。Grannyは「おばあちゃん」という意味です。これも日本語字幕はありませんが、動画を見てもらうとイメージが沸くと思います。

 

Being a Skype Granny on School in the Cloud from Open Lab on Vimeo.

 

 このイギリスの女性は、スカイプを通じて、インドの子供達と話しています。ただ、具体的に何かを教えているわけではありません。子供達の好奇心を刺激し、勉強そのものへの姿勢を育てようとしています。歌を歌ったり、絵を書いたり、何かを作ったり、時には子供達が提案してきたことを一緒にやります。その過程で、子供達は文字を読んだり、英語を勉強したり、社交性や、問題解決能力、勉強への習慣を身につけていきます。

 スガタ氏のメソッドの中で、もっとも大切なのは、自己学習環境と意欲をかきたてる仕組みです。学校が先進国にあっても、発展途上国にあったとしても、インターネットを通じて、十分な学習環境を作っていく。僕はそんなSchool in the Cloud (クラウド上の学校)がとても素晴らしいと思います。

21世紀の語学学習

 最後に、自分がいま取り組んでいることを少し書きたいと思います。ポイントはやはり「自己学習環境」と「意欲をかきたてる仕組み」です。実は、これまで書いてきたことは、語学学習と非常に親和性が高いんです。語学習得に必要な知識、例えば、文字の書き方や発音、文法などはインターネットを通じての独学でも十分に身につけることができます。そこで、まず私たちはインターネット上での学習環境を整えていこうと考え、 Complete Roadmap for How to Speak Japanese というものを作りました。これを読めば、日本語が話せるようになるまでの手順と、取り組むべき教材がすべてわかるようになっています。また、Wasabi’s Online Japanese Grammar Reference という新たなプロジェクトもスタートさせました。これは必要な文法の解説をすべてインターネット上に公開し、誰もがいつでも文法でわからないところを調べられるようにするというものです。これが完成すれば、日本語学習の為の自己学習環境は整ったと言えると思います。

 その一方で、独学はモチベーションを維持するのが難しいと言われています。また、語学学習には、ネイティブスピーカーと会話の練習をすることが必要不可欠です。そこで私たちが取り組んでいるのが「地方に住む年配者と世界の日本語学習者を繋ぐ」Wasabiなんです。今の日本語学習は費用がかかりすぎます。それに語学学校(オンライン・オフラインともに)に行くと、文法書を使ったインプット型のレッスンが主流です。しかし、そうした詰め込み型学習をしなくても、インドの子供達のように、自分達で自由に勉強していけばいいんです。日本語を勉強する動機は人それぞれだし、勉強できる環境がインターネット上にあるんですから。むしろ、学習者に必要なのは、Skype Grannyのような学習に辛抱強く付き合ってくれ、学習を鼓舞してくれる存在ではないでしょうか?

 スガタ氏は「クラウド上に学校を作りたい」と言いました。この取り組みが上手くいくか、まだ誰にもわかりません。アイディアに共感した世界中の教育者が、それぞれのやり方で挑戦をしている真っ最中です。僕もその一人になりたいと思い、Wasabiを始めました。インターネット上に自主学習環境を作る、そしてITを活用して意欲をかきたてる仕組みを提供する。…もうすぐサービスを始めて一年が経ちます。ずっと開発に集中していた成果もあり、自分がやりたかったことが徐々に形になってきました。後はそれがどう転んでいくのか。はたして市場に評価されるのか。さあ、賽は投げられた。

 

追伸:

Wasabiでは一緒に働いてくれる仲間を探しています。興味がある人はtokiwatakuya at gmail.com までご連絡ください。詳しいお話しができればと思います。

何が幸せな人生を作るのか?ハーバード大学の75年間の研究が面白い!

 2016年で最初に見たTED Talksがいきなり大当たりだったので、ブログで紹介したいと思います。テーマは、よくありがちな「幸せな人生の送り方」的なやつ、しかしその結論に辿り着くまでのプロセスは全くありがちではありません。英語が問題ない人は、ぜひ実際のプレゼンテーションを見てみてください。話し手の声も渋くていい感じです…!

 さて、あなたはいったい何が幸せな人生を作るのだと思いますか?お金、仕事、家族、社会的地位、人生には色んな要素があります。大切なものはきっと人によって違うでしょう。先に結論から入ります。人生は下記によって幸福度が決まるそうです。

  1. 人とのつながり
  2. つながりは数でなく密度

 ありきたりな結論だと思いましたか?僕は思いました。きっとそのようなことを話すんだろうなと。実は、僕はこの手の人生のコツ的な話は、わりと半信半疑で受け止めてきたタイプです。人によって価値観が違うのだから一概には言えないだろうと。しかし、今回は納得せざるを得ませんでした。これが研究だ、そう言わんばかりのプレゼンテーションでした。では、彼らは一体どのようにしてこの結論を出したのでしょうか?

 なんと、この研究では75年にわたり、724人の人生を記録し続けたそうです。始まりは1938年。上流階級と貧困層から対象者を選び、それぞれがどんな人生を歩むのか、その全てを記録し続けたそうです。皆、第二次世界大戦を経験し、ある人は工場のワーカーに、ある人は弁護士に、ある人は貧困層から這い上がり、またある人はその逆に、そしてまたある人はアメリカの大統領に。この記録はただアンケートを送るのではなく、彼らの家に出向き、本人だけではなくその家族にもインタビューをし、健康診断までも行っています。話し手のRobert Waldinger氏は4代目のディレクター。また、724人の内の60人は今もまだ生きており(みんな90代)、この研究への協力を続けています。まさに執念。

 そうして一人ひとりの人生を記録することによって出たのがこの結論です。人生の幸せは、お金や名声、ハードワークをすることからは生まれない。良い人間関係こそが人を幸せに、健康にしてくれると。そう、人間関係は幸福感だけでなく、人の健康面にも大きく影響を与えていることがわかったそうです。50歳のときに良い人間関係を築けていた人は、80歳でもっとも健康でした。これは精神的な幸福感よりも、より顕著に差が出たそうです。

 ところで、余談ですがプレゼンテーションの中の問題提起の一部で、「いい人生を送るために、我々は決まって仕事に熱心に取り組むように言われている」と、日本のオフィスの写真が出ます。今の20~30の世代は価値観が変わってきていますが、家庭を顧みずに働きまくることが日本のサラリーマンの代名詞でした。それがまるで幸せになれない生活パターンの典型のような感じで取り上げられるのは複雑ですね…。

 僕は仕事柄、50歳~70歳の人と接する機会が多いのですが、人生はまさに十人十色です。家族と幸せそうに暮らしている人もいれば、単身で寂しそうにされている人もいます。この研究結果を聞いて、定年退職後に年配者が活躍できるセカンドライフがあることは本当に重要だなと再確認しました。ミクロに見ても、活躍できる=他人に必要とされるというのは日々のこれ以上ない活力になります。マクロに見ても、迎えつつある少子高齢化社会の中で、年配者が活躍できる=社会的価値を生み出せるというのは経済に大きなインパクトを与えます。そして、高度にインフラが発達した日本に、今の技術進歩があればそれも不可能ではないと思います。 

 自分が年を重ねる度に思いますが、人生というのは面白い。全てが上手くいく訳じゃありませんが、だからこそ面白い。その思考錯誤をしている感が人生の醍醐味なんだと思います。しかし、それが一人でただ思考錯誤をするのはちょっと違いますよね。それだと「もがき苦しむ」って感じになってしまう気がします。このワクワクする思考錯誤を多くの人に提供できるようなサービスにしたい、そんなことをこの動画を見た後に考えました。皆さんはどう思いますか?人生を幸せにするものは、やっぱり「人とのつながり」なんだそうですよ。しかし、この75年の研究をした仲間というのは、それこそすごいつながりの密度ですよね。この人たちが一番人生を楽しんでいそうだ…!

 

 

2015年を振り返って

 毎年のように言っていますが、早いものでもう1年も終わりですね。年を重ねる度に、時間の流れが早くなっていくように感じます。皆さんはこの年末をいかがお過ごしでしょうか?私は28日が仕事納めで、後は頭の整理をしながら、のんびりと年を越す予定です。そして、毎年のことながら、振り返りを視覚化することによって、より明瞭に2016年に取り組んでいければと思います。

 

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※島原の「山の上カフェ」から一枚。山と海の距離が近い。

2015年の振り返り

 2015年をざっくり振り返るとこんな感じでした。やはり新たに起業しただけあって、Wasabi色の強い一年ですね。相変わらずジェットコースターのような日々でしたが、面白おかしく過ごせたのではないかと思います。

  • 2月 Wasabiトライアルを開始
  • 3月 インドの日系商社の退職を決意
  • 5月 退職
  • 6月 インドから帰国 & 新会社設立
  • 7月 Wasabi リリース
  • 11月 海外視察開始
  • 12月 中国滞在中

  あらためて自分で見ても、なかなか思い切りのいい人生だなあと思います。たしかWasabiの構想を持ち始めたのが2014年の11月頃で、そこからメンバーを探して、サービスの土台を作って、3か月でトライアル開始、その翌月には退職を決めるって。「ちゃんと市場調査なんかはしてんのか?」って感じですよね。今回の起業は完全にプロダクト・アウト型のチャレンジです。ある程度は市場を見てから参入を決めていますが、商品は自分たちが良いと思うものを全力投球しています。一回目の起業はマーケット・イン型で、状況にあわせて売れるものを売るという感じでした。私が経営者だったのは4年間でしたが、潰さないことに徹底すれば、会社を経営するのはそこまで難しいものではないと感じたのを覚えています。ですが、やりたいことをやるというのは全く別の難しさがあります。もちろん、だからこそ面白いのですが。「毎日を刺激的に過ごせるのはなんと幸せなんだろうか」…そんなことを日々感じていた一年間でした。

2015年の良かったこと

 新しい仕事に前向きに挑戦できたことが今年は良かったと思います。実は前から敬遠していたプログラミングでしたが、必要に迫られて自分でHPの開発を行いました。1カ月ほどかけて、Codecademy のコースを4つ受講し、専門書を読んで、既存サイトのコードをひたすら書写しました。やっている途中に、これは英語学習と要領は殆ど同じだなと感じました。原理原則を学び(言語でいう文法など)、後はただ上手い人の真似をする、そうすることで誰でも一定のレベルまでは到達できるものだと思います。僕はまだ、HTML・CSSPHPを触った程度ですが、これより上のレベルのプログラミングが必要になっても、(プロのエンジニアにお願いするか自分でやるかはさておき)対応していけるだろうなという感覚があります。

 日本語という言語に対する知識や、英語でのアウトプットに対しても、初めての経験ながら、ひとまずは満足できる内容になったと思います。例えば、7月後半からWasabiで日本語に関するブログを書き始めたのですが、5カ月間で122記事を書きました。直近の は vs. が: Five Points You Need to Know という助詞の「は」と「が」の違いを説明した記事は、2日間で121シェアされ、多くの日本語学習の人からコメントをもらいました。日本語スピーキングテストやレッスン教材の開発など、時間の経過に比例してたしかにクオリティが上がっています。

 これは、新たな分野に対して自分なりの勉強の仕方が確立されてきたことが大きいです。現代のような技術が急速に進化していくこの世の中、こうしたQuick Learnのスキルは重宝します。インプット・アウトプット、両方の質の向上を感じることができた一年でした。

2015年の悪かったこと

 残念なことに、直接の業務に関係のない勉強が完全にストップしてしまいました。CIMAという英国勅許公認管理会計士の勉強をしていましたが、15~6ほどあるうちのテストに2つ合格したところで中断。英語のスピーキングの練習も中断。去年から購読しているThe Economistも溜まりに溜まっています。今は仕事が終わったら寝る、そんな暮らしの繰り返しです。これはいかんなあ…と。僕の相変わらずのコンプレックスは器用貧乏であることです。大体のことは人並みにはこなせる、そのキャッチアップも早い自信があるのですが、悔しいことに専門性がありません。日本語の知識も日本語学者の人よりあるわけでもなく、プログラミングもプロのエンジニアの人には到底及ばず、英語も海外市場の知識も人並み以上であってもプロではない。どれも中途半端なんですよねえ。この汚名を返上すべく、コツコツと勉強しようと思っていたのですが、これが途中で止まっています。これからは複数分野の橋渡しができる人材の時代だ!…なんていう意見もありますが、そこで自己肯定をするわけにはいかないんですねえ。

2016年の目標

 2015年の反省を踏まえて、あえての目標設定。2016年はさらに業務に集中する一年にしたいと思います。毎朝1時間は勉強タイム…そんな設定もできましたが、2016年は休んでいる時間以外は仕事に集中します。プロダクト・アウトでの起業、僕はいまのサービスを心から好きだし、市場に絶対存在するべきものだと思っています。それだけで売れたら苦労しないのが商売ですが、その商品を片手に真っ向から正面突破してやるつもりです。そして、またしてもあっという間に過ぎるであろう2016年も、後悔を一つも残すことなく存分に楽しむつもりです。2016年は3月から数カ月は日本、それから東南アジア圏を訪問するつもりです。タイミングが合う方はぜひお茶をしましょう。相変わらず住所不定でフラフラしている僕ですが、2016年もどうぞよろしくお願いします。

グローバルとは…ただの言葉じゃ。中国でグローバルとローカルを考える。

 お久しぶりです。気づいたらもう2015年も終わろうとしていますね。いま中国の上海から天津行きのフライトの中でこのブログを書いています。現在、Wasabi英語圏でのみサービスを提供しているので、近いうちに多言語化しようと思っているのですが、まだはっきりと進出先を決定していません。日本語学習者の母数を考慮すれば、中国・インドネシア・韓国が次の展開の選択肢にあがってくるのですが、やはり現地を知らないことには何も始まらないということで、しばらく地元のご飯を食べて、こちらのWebサービスを使い、地元の生活環境に浸る、そんな全国行脚の旅をしようと思っています。

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上海市内にて(写真にすると空気の汚れが目立つ…)

中国の国内線でふとグローバルを考える

 思えば数年前、僕は大阪府が主催するグローバル人材育成うんたら研修に参加していました。そしていま、自分が'グローバル'にサービスを展開するようになって思うのは、「グローバルとはただの言葉である」ということです(本エントリーのタイトルは、私の敬愛するバガボンドから来ていることに皆さまお気づきですよね?)。いま僕のフライトの席の周りの人は(当たり前ですが)中国人が殆んどです。インドにいたときは、自分の周りにいたのは大半がインド人でした。辞書によれば、グローバルとは「世界的規模であるさま、国境を越えて地球全体に関わるさま」という意味があるそうです。しかしながら、国境をいくら越えてもそこにはそれぞれのローカルがあるだけで、カメレオンのように個々に色を変えて取り組む必要があります。グローバルな色なんてありません。 

 

世界の均一化はまだ遠い未来

 インターネットを使えば、中国にはグレート・ファイアウォールがあり、インターネットに規制が入っていることが簡単にわかります。インターネット業界で言えば中国は非常に独特な市場ではないでしょうか。例えば、中国からは海外のサーバーが使用されたWEBサイトにはアクセスがしづらいと言われています。では、中国のユーザーにサービス提供をするときは中国にサーバーを置いた方がいいのか?オンラインレッスンにはSkypeでなくQQ(中国で普及しているコミュニケーションツール)を使った方がいいのか?などなど、そんなことを検討する必要があります。言うまでもなく、GoogleFacebookTwitter、LINEなど、この辺りのサービスは軒並み使用することができません。その代わりに、同等のサービスが中国企業によって提供されています。また、特に規制がされていないサービスでも、同等のものが中国にはあることが多く、中国企業のそれの方がシェアを取っていることが殆どです。例えば、Wasabiでは支払い対応にPaypalを使っていますが、中国では「支付宝」の方が一般的です。中国系サービスでPaypalが使用されているのを見たのは、英語対応をしているフライトを手配するサイトぐらいです。やはり中国に進出するのであれば、ただ単に中国語版のサイトをオープンするのではなく、ローカルのスタンダードに合わせた細かいケアが必要になるでしょう。こういうことも現地に来てみないと気づかないことの一つでした。

 

オンラインが主流だからこそのオフライン

 これだけ国々で状況が違うことを一人で、ましてや日本人だけで対応するなんて到底無理な話です。やはり、その国の言葉が話せて、文化やマインド、市場に詳しい、そんな人がチームに必要です。インターネットで簡単に世界中が繋がれる、そんな時代だからこそ、新しい仲間を探すべく、わざわざ飛行機にのって、現地の人と顔を合わせたコミュニケーションをしていく重要性が高まっているのではないでしょうか。働く場所、働き方が選べる時代です。一つの場所に根を張った商売はもちろん偉大なことなのですが、新しい場所で新しい価値観に出会う楽しみはまた特別なものがあります。Wasabiも今はただ英語で情報発信をしているだけで、ターゲットがぼんやりしてしまっています。この全国行脚のなかで、各国にローカナイズしていく為のパートナー探しに注力したいと思います。

 

 

 次はあなたの住む場所へお邪魔するかもしれません。その際はどうぞお茶の一杯にでもお付き合いくださいませ…!

よそ者が地域復興を考える(その2): 街が儲かるということ

 早いものでもうすっかり夏も終わりですね。時間が経つのは本当に早い。僕はと言うと、相も変わらず日本の最西端、島原半島で元気にやっています。さて、前回のエントリーでは、地方都市の経済の現状について触れてみましたが、今回はそもそも一体どういう状態が ”地域復興” を意味するのか?そんなことについて考えてみたいと思います。

 

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※島原水祭り。結構田舎も面白い。

 

結論:中の商品がもっと外に売れるか、外の人がもっと中に来るか

 シンプルにシンプルに考えれば、これに尽きるのではないかと思います。もう少しカッコよく?表現するのであれば、貿易復興と観光復興、そのようにも呼べるのかなと。つまり、その地域内で流通させるお金の絶対量を増やすということです。

 例えば、よそ者である私が島原のスナックで100万ほど飲み明かしたとしましょう。じゃんじゃん飲んでの大盤振る舞いです。これはラッキーと、100万円を受け取ったそのママは、20%の20万を貯金して、残りの80万円で宝石を買いました。これまたラッキーとその80万円を受け取った宝石店の店主は、やはり20%を貯金して、残りの64万円で家具を買いました。さらにその64万円を受け取った家具は…と、この流れが0円になるまで続く、いわゆる乗数効果というやつですね。限界消費性向(何%貯金して、何%使うかという数値)が80%だとすれば、100万円が500万円の経済効果になると言われています。

*この例は話をシンプルにする為に売り上げ=100%利益としています。

 

あなたは100万円が棚から降ってきたら何万円貯金する?

 ところが、先行きが不安な昨今です。上記の例では、80%が消費に回ると仮定しましたが、現実にそんなに豪気な人がどのくらいいるでしょうか?もしあなたが明日100万円のお年玉をもらったらどうしますか?80万円の時計でも買っちゃいますか?そうはいきませんよね。将来を見据えて貯金しておこう、そんな風に思ってしまう人も多いのではないかと思います。これが政府のバラ撒き政策が上手くいかない一つの要因です。バラ撒いてもなかなか使われない。

 ところで、ご存知の通り、僕は別に経済学を勉強していた訳でもなく、これら上で並べたことは、これまでに散々言い尽くされてきたことばかりです。では、一体どうすればいいのか?実はそれも分かっている。地域の商品を外に売って儲かった事業者が地域内で消費をする、もしくは地域の外から観光客に来てもらって地域内で消費をしてもらう、この2択です。今の日本の地域の問題は、解決策も見えている状況で、これらを実行する人、もしくは出来る人が少ないということではないでしょうか?

 

街が儲かる、街で儲ける

 観光復興で考えてみましょう。シンプルに考えるとこんな式が浮かび上がってきます。

 

流入数×滞在期間×時間当たりの消費額=街の売り上げ

 

これを地域全体で取り組むことが、地域復興ということであり、その結果が街が儲かるということだと思います。これは個人で出来ることでもなく、一企業でやることでもありません。街全体でこの式の解が最大化するよう取り組んでいくことが必要です。また、さらに重要なことはそこで儲かった人たちは地域にお金を回していくということです。そうすれば街は確実に前と進んでいきます。貿易復興にしても同じことです。地域にある特産物を街が後押しして外に売る。その儲かったお金を地域に循環させる、それだけです。

 

ビジョンと戦略

 言葉にするとシンプルでもこれを実際に実行するのは難しいものです。「海外の観光客を連れてこよう!」「どうやって?」だし、「海外に特産物を販売しよう!」「どうやって?」となります。そもそもなぜ儲かったお金を地域内で使わないといけないのか?と言われたら、「それはごもっとも。あなたのご自由に。」となってしまいます。地域として消費マインドを持つ為にも、例の方程式の解を最大化するためにも、全体で連携して戦略的に動く、ということが必要です。いま地域に必要なのは、貿易復興もしくは観光復興の大きな絵が描ける人、そしてそれを実行に移す力のある人、ですよね。これはもう本当に。しかし、地方都市は往々にして人材不足なものです。もし地域のなかにいなければ、外から無理矢理にでも引っ張ってこないといけないのかもしれません。それが多少の摩擦を生むのだとしても、個人的には待ったなしの状況な気がします。

 

最後に

 色々と書いてみましたが、僕はと言うと地方から日本語教育というサービスを輸出することに尽力しています。インターネット教育に関心があってのこの事業なのですが、多くの地元の人に協力してもらっており、大きく利益を残して、しっかりと街に還元せねばと感じているところです。今は自分たちだけで奮闘している状態なので、上手く街として絵を描けたらなと思いつつ、またしばらく自分の仕事に集中しようと思います。それではまた次回。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よそ者が地域復興を考える(その1): 地方都市って本当になくなるの?

 早いもので島原に来て2ヶ月が経ちました。どうやら世間では思ったよりも地方への移住や地域復興の取り組みが注目を浴びているようです。しかし、実際にその現場に飛び込むのは、東京や大阪という都会に住んでいる人には難しいものかもしれません。地域復興には「若者、よそ者、ばか者」が必要だと言われますが、残念ながらここでそのような人を見かけることはあまりありません。私は島原の地域復興の為に来たわけではないですが、ある意味でその現場の第一線にいますので、感じたことをまとめていこうと思います。

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この地域復興シリーズを書く理由

 ありのまま書くと、実際に地方に住んで生活をしていると、そこに愛着が湧いてくるものです。このまま島原市が廃れていく、なくなってしまう…それはよそ者と言えどやはり寂しい。しかし、この日本の地方が抱える山のように巨大な問題を解決しようとするまでの気持ちはそう簡単には持てません。そもそも、私一人で出来ることではありません。そこで決めました。まずはその現状や自分の意見をブログに書いてみようと。そして、このシリーズを読んで「いっちょ一肌脱いだろか!」「地域復興にワクワクしてきた!」そう思ってくれる人が増えて、具体的な何かが生まれることを願っています。

この地域復興シリーズを読んで欲しい人

  1. 自分の地元の地域復興がしたいが、何をしたらいいかわからない人
  2. 島原半島を盛り上げたいと思っている人
  3. 少子高齢化問題に関心がある人
  4. 地方自治体に問題意識のある人
  5. 地方都市こそWEBをもっと活用すべし!と考えているエンジニア
  6. 英語、中国語、その他アジア圏のローカル言語のいずれかが達者で、日本のグロバール化は地方から始まるべし!と考えている貿易業、観光業の経験者
  7. 東京で消耗している人

地方都市って本当になくなるの?

 さて、すっかり長くなりましたがここからがシリーズ(その1)の本題です。あなたはどう思いますか?日本の地方都市が10年後、20年後になっても今の形を保っていられると思いますか?…残念ながら、私の答えは「No」です。その根拠を財政と人口という観点から見てみましょう。皆さん、うっすらと気づいていることばかりだと思いますが、数字にしてみるとなかなかのインパクトです。

財政

 では、ここでまたもう一つ質問を。私の住む島原市の決算は、黒字と赤字のどちらだと思いますか?…多くの人は頭のなかで「どうせ赤字だろ」と呟いたのではないでしょうか。そう、答えは「黒字」です。平成25年の島原市の決算報告によれば、301億円の歳入に対して、296億円の歳出。まあ、これが純粋な黒字であれば、日本の将来を憂うことなど何もないのですがね。地方交付税、国庫支出金という言葉をご存知ですか?これが今の地方自治体がゾンビだと言われる所以です。

地方交付税

地方公共団体が等しくその行なうべき事務を遂行することができるように国が交付する税。

国庫支出金

国が地方公共団体に支出・交付する資金のうち,その使途が特定されているものをさす。

コトバンクより

 次に、この二つが島原市の歳入の割合のどれぐらいを占めのるか見てみましょう。

 

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なんと合計で49.3%。。。 半分近くのお金が国からやってきている訳です。もしこれがなくなれば140億円近い赤字になります。地方交付金、恐るべし。では、その大元の財源になっている国の財政はどうなっているのでしょうか?黒字ですか、赤字ですか??…これは聞くまでもありませんよね。

我が国の予算は、急速な高齢化の進展による社会保障関係費 等の増大により歳出が伸び続けている一方、税収は伸び悩み、近年では歳入の半分を借金に依存せざるを得ない状況が恒常的に 続いている。新規国債発行額が増加傾向にあり、その結果、国債 残高は国際的にも歴史的にも類をみない水準となっている。 (財政制度等審議会平成27年度予算の編成等に関する建議 (平成26年12月25日)」)

 だそうです。つまり、島原市はその運営の半分を地方交付金に依存しているが、その大元の日本はその財源を借金によって成り立たせている、といことです。これはおそらく他の地方自治体も似たような状況下にあるのではないでしょうか。

人口

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 上記は島原市と近郊の市の人口推移です。見事な下り坂ですね。参考まで、島原市は平成22年度の人口が4万7千人となっていますが、この50%の人が50歳以上の人々です。この人口減少と高齢化は今後ますます進んでいくでしょう。島原ではこれから1年で1%の人口減をしていくと言われています。なので、20年後には人口が4万人を切っているはずです。そして、上と同じく、他の地方自治体も島原と遠からず近からずの状況なのではないでしょうか。

つまり

 国の借金で成り立つ地方自治体、深刻に進む人口減と高齢化。言い尽くされた言葉ですが、やはり今の地方都市が残っていくとは考えにくいです。残るという根拠がない、残らない根拠はたくさんある、となれば、否が応にも出る答えは、残らないになってしまいます。

 

地方都市の行く末

  もう少し突っ込んで地方都市のシナリオを考えてみましょう。先ほど島原市は ”20年後には人口が4万人を切っている” と書きました。この予想はまず外れていないでしょう。さて、ここで考えてみたいのは「日本という国は、この先20年の間、今と同じだけの地方交付金を出し続けるのができるのか?」ということです。繰り返しますが、その財源は借金です。今と同じ状況を維持することは難しいという前提に立っておくのが現実的ではありませんか。では、その場合に地方都市へどういう影響を及ぼすのでしょうか。

 「交付金の払い先を減らしたい」、まず国はこう考えるはずです。地方を見れば、人口はどんどん減っている、インフラの過剰整備が目立つ、維持費も馬鹿にならない。そうすれば、おのずと「隣町同士が合併してくれないかなあ」、「人も一つの町に集中して住んでもらえないかなあ」といったアイディアが浮かんでくると思います。これまでの市や町の合併はさほど実生活に大きな影響がありませんでしたが、これからはそうはいかないはず。まだ少しでも地域復興の可能性が残されている場所に、周りの小さい市や町から人を集めてくる、そうすることで経済の活性化を図り、自治体の運営コストを下げる。こうした動きがどんどん加速してくるのがこれからの日本です。

まとめ

 地方都市の今後の状況について考えてみましたが、「何も手を打たなければ、地方都市は人が一つの場所に集まる合併を繰り返すことで、ここ10年、20年は運営されていく」という悲観的な結論に辿り着いてしまいました。現実的でないですか?しかし、財布をひっくり返しても、今の体制を維持するだけのお金がない。やむをえない、そんな声が数字を見ていると聞こえてくる気がします。その合併の土台の場所になれるように、今のうちに種をまいておくのが現実味のある行動なのかもしれません。日本全体がもう一度高度成長期を迎えることはないです。緩やかに下っていく日本、その中でも成長している限られた都市になる、それがこれからの適切なポジション取りになる気がしました。ただ、暗くなっていても仕方ありません。正しく状況を把握し、取るべき行動を取り続ける、そうすることで盛り上げていくしかないですよね。よそ者が地域復興を考える(その2)では、地方復興とはどういう状態を指すのか?について考えてみたいと思います。

地方の年配者を世界へ繋ぐ、新しい日本語学習のカタチ Wasabi

 本日、オンライン日本語学習サービス Wasabi(英語)をオープンしました。Wasabiは「やる気ある全ての学習者が日本語を確実に習得できるように」をビジョンとして、ネイティブとのオンラインレッスンを市場の最安値で提供していきます。その為に、私たちは日本の地方に住む年配者の方々に注目しました。ご存知の通り、日本の地方は過疎化が進んでおり、若者の数がどんどん減っています。私たちが拠点を置く長崎県島原市もその内の一つで、「子供や孫となかなか会う機会がない」、「定年退職をしたから新しい趣味や話し相手が欲しい」…こうした声を至るところで耳にします。そんな年配者の方々を、インターネットを通じて、海外で日本語を学ぶ若者たちへと結びつけました。 

 現在、Wasabiに所属している最高齢の先生は81歳のお婆ちゃんです。Skypeの使い方を勉強したり、日本語を教える練習をしたりと、新しいことばかりで苦労もされていますが、一緒に面白おかしく慌ただしい日々を過ごしています。これまで一人でテレビを見ていた時間が、急に海外の若者から「先生!」と呼ばれる時間へと変わる…私たちはレッスンの後に先生と一緒にお茶をすることもよくあるのですが、「うちの子はねえ…」と嬉しそうに生徒自慢をする皆さんの様子を見ると、なんだかこちらまで嬉しくなってきます。ユーザーからも、年配者ならではの、暖かみがあって辛抱強く話し相手になってくれるレッスンは、非常に好評のようです。

 ところで、この現代が歴史上でもっとも言語が習得しやすい時代だと言われていることはご存知でしょうか。ポケットに入っているスマートフォン一つで、音源が聞ける、テキストが読める、自分の声は録音できる、インターネットには無数の情報が拡がっている…これほど便利な時代はかつてありませんでした。しかし、ただ一つ、まだ一つだけ足りないものがあります。ずばり、それはネイティブとの会話の練習です。こればかりは相手があって成り立つものなので、技術の力では未だカバーしきれていません。しかし、逆を言えば、ここさえ問題解決できれば、おおよそ全ての人がターゲットにしている言語を習得できるようになるはず。これが我々の出発点である仮説です。

 とはいえ、ただのお喋りを繰り返すだけで習得できるほど、言語は簡単なものではありません。そこには理論に基づいた学習のカリキュラムが必要です。そして、実はこれこそがWasabiの強みの一つでもあります。私たちのカリキュラムの監修者は、一橋大学社会学研究科博士課程、言語学専攻、現在はハーバード・イェンチ ン研究所の客員研究員としてアメリカのボストンで日本の地域言語の研究を行っている、いわば言葉のプロフェッショナルです。彼女は「Wasabiの先生は日本語教育の経験を持たない年配者。それでもしっかりと学習効果が上がるカリキュラムを作って欲しい」という無茶な依頼にしっかりと応えてくれて、スピーキングに特化&細分化した、専用のカリキュラムを設計してくれました。これにより、地方の年配者が立派な先生に早変わりです。日本の地方に住む豊富な数の年配者、インターネット、確かな言語知識に基づいたサービス設計、この組み合わせがWasabiです。 

 私たちはこれより「やる気ある全ての学習者が日本語を確実に習得できるように」を目指し、その為に市場の最安値でネイティブとのレッスンを提供していきます。まずは英語圏の学習者を対象にしていますが、後々は各地の言語にも対応させていくつもりです。世界に散らばる日本語学習者と、地方に住む年配者の為に、メンバー一同、身を粉にして働いていきますので、どうぞ暖かいご支援をよろしくお願いいたします。

 

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(追記)

2016年8月、Wasabiのレッスンを一時中止しました(こちら参照:お知らせ)。

2016年11月、Wasabiを株式会社スモールブリッジに譲渡しました(こちら参照:2016年を振り返って)。

 

常盤卓也