よそ者が地域復興を考える(その1): 地方都市って本当になくなるの?

 早いもので島原に来て2ヶ月が経ちました。どうやら世間では思ったよりも地方への移住や地域復興の取り組みが注目を浴びているようです。しかし、実際にその現場に飛び込むのは、東京や大阪という都会に住んでいる人には難しいものかもしれません。地域復興には「若者、よそ者、ばか者」が必要だと言われますが、残念ながらここでそのような人を見かけることはあまりありません。私は島原の地域復興の為に来たわけではないですが、ある意味でその現場の第一線にいますので、感じたことをまとめていこうと思います。

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この地域復興シリーズを書く理由

 ありのまま書くと、実際に地方に住んで生活をしていると、そこに愛着が湧いてくるものです。このまま島原市が廃れていく、なくなってしまう…それはよそ者と言えどやはり寂しい。しかし、この日本の地方が抱える山のように巨大な問題を解決しようとするまでの気持ちはそう簡単には持てません。そもそも、私一人で出来ることではありません。そこで決めました。まずはその現状や自分の意見をブログに書いてみようと。そして、このシリーズを読んで「いっちょ一肌脱いだろか!」「地域復興にワクワクしてきた!」そう思ってくれる人が増えて、具体的な何かが生まれることを願っています。

この地域復興シリーズを読んで欲しい人

  1. 自分の地元の地域復興がしたいが、何をしたらいいかわからない人
  2. 島原半島を盛り上げたいと思っている人
  3. 少子高齢化問題に関心がある人
  4. 地方自治体に問題意識のある人
  5. 地方都市こそWEBをもっと活用すべし!と考えているエンジニア
  6. 英語、中国語、その他アジア圏のローカル言語のいずれかが達者で、日本のグロバール化は地方から始まるべし!と考えている貿易業、観光業の経験者
  7. 東京で消耗している人

地方都市って本当になくなるの?

 さて、すっかり長くなりましたがここからがシリーズ(その1)の本題です。あなたはどう思いますか?日本の地方都市が10年後、20年後になっても今の形を保っていられると思いますか?…残念ながら、私の答えは「No」です。その根拠を財政と人口という観点から見てみましょう。皆さん、うっすらと気づいていることばかりだと思いますが、数字にしてみるとなかなかのインパクトです。

財政

 では、ここでまたもう一つ質問を。私の住む島原市の決算は、黒字と赤字のどちらだと思いますか?…多くの人は頭のなかで「どうせ赤字だろ」と呟いたのではないでしょうか。そう、答えは「黒字」です。平成25年の島原市の決算報告によれば、301億円の歳入に対して、296億円の歳出。まあ、これが純粋な黒字であれば、日本の将来を憂うことなど何もないのですがね。地方交付税、国庫支出金という言葉をご存知ですか?これが今の地方自治体がゾンビだと言われる所以です。

地方交付税

地方公共団体が等しくその行なうべき事務を遂行することができるように国が交付する税。

国庫支出金

国が地方公共団体に支出・交付する資金のうち,その使途が特定されているものをさす。

コトバンクより

 次に、この二つが島原市の歳入の割合のどれぐらいを占めのるか見てみましょう。

 

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なんと合計で49.3%。。。 半分近くのお金が国からやってきている訳です。もしこれがなくなれば140億円近い赤字になります。地方交付金、恐るべし。では、その大元の財源になっている国の財政はどうなっているのでしょうか?黒字ですか、赤字ですか??…これは聞くまでもありませんよね。

我が国の予算は、急速な高齢化の進展による社会保障関係費 等の増大により歳出が伸び続けている一方、税収は伸び悩み、近年では歳入の半分を借金に依存せざるを得ない状況が恒常的に 続いている。新規国債発行額が増加傾向にあり、その結果、国債 残高は国際的にも歴史的にも類をみない水準となっている。 (財政制度等審議会平成27年度予算の編成等に関する建議 (平成26年12月25日)」)

 だそうです。つまり、島原市はその運営の半分を地方交付金に依存しているが、その大元の日本はその財源を借金によって成り立たせている、といことです。これはおそらく他の地方自治体も似たような状況下にあるのではないでしょうか。

人口

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 上記は島原市と近郊の市の人口推移です。見事な下り坂ですね。参考まで、島原市は平成22年度の人口が4万7千人となっていますが、この50%の人が50歳以上の人々です。この人口減少と高齢化は今後ますます進んでいくでしょう。島原ではこれから1年で1%の人口減をしていくと言われています。なので、20年後には人口が4万人を切っているはずです。そして、上と同じく、他の地方自治体も島原と遠からず近からずの状況なのではないでしょうか。

つまり

 国の借金で成り立つ地方自治体、深刻に進む人口減と高齢化。言い尽くされた言葉ですが、やはり今の地方都市が残っていくとは考えにくいです。残るという根拠がない、残らない根拠はたくさんある、となれば、否が応にも出る答えは、残らないになってしまいます。

 

地方都市の行く末

  もう少し突っ込んで地方都市のシナリオを考えてみましょう。先ほど島原市は ”20年後には人口が4万人を切っている” と書きました。この予想はまず外れていないでしょう。さて、ここで考えてみたいのは「日本という国は、この先20年の間、今と同じだけの地方交付金を出し続けるのができるのか?」ということです。繰り返しますが、その財源は借金です。今と同じ状況を維持することは難しいという前提に立っておくのが現実的ではありませんか。では、その場合に地方都市へどういう影響を及ぼすのでしょうか。

 「交付金の払い先を減らしたい」、まず国はこう考えるはずです。地方を見れば、人口はどんどん減っている、インフラの過剰整備が目立つ、維持費も馬鹿にならない。そうすれば、おのずと「隣町同士が合併してくれないかなあ」、「人も一つの町に集中して住んでもらえないかなあ」といったアイディアが浮かんでくると思います。これまでの市や町の合併はさほど実生活に大きな影響がありませんでしたが、これからはそうはいかないはず。まだ少しでも地域復興の可能性が残されている場所に、周りの小さい市や町から人を集めてくる、そうすることで経済の活性化を図り、自治体の運営コストを下げる。こうした動きがどんどん加速してくるのがこれからの日本です。

まとめ

 地方都市の今後の状況について考えてみましたが、「何も手を打たなければ、地方都市は人が一つの場所に集まる合併を繰り返すことで、ここ10年、20年は運営されていく」という悲観的な結論に辿り着いてしまいました。現実的でないですか?しかし、財布をひっくり返しても、今の体制を維持するだけのお金がない。やむをえない、そんな声が数字を見ていると聞こえてくる気がします。その合併の土台の場所になれるように、今のうちに種をまいておくのが現実味のある行動なのかもしれません。日本全体がもう一度高度成長期を迎えることはないです。緩やかに下っていく日本、その中でも成長している限られた都市になる、それがこれからの適切なポジション取りになる気がしました。ただ、暗くなっていても仕方ありません。正しく状況を把握し、取るべき行動を取り続ける、そうすることで盛り上げていくしかないですよね。よそ者が地域復興を考える(その2)では、地方復興とはどういう状態を指すのか?について考えてみたいと思います。