マイヒーロー、イチロー

イチローの試合を観戦するために、シアトルのセイフコ・フィールドに行ってきました。が、残念ながらイチローのプレーを観ることはできませんでした。ご存知の通り、5月4日にイチローは球団の特別アドバイザーに就任し、今シーズンはもう試合に出場しないという報道が出ています。僕がチケットを取ったのは4月16日だったので、タッチの差で間に合いませんでした。僕のことをよく知る人は「あれ?そんなに野球が好きだったっけ?」と思うかもしれません。実際、野球がそこまで好きというわけではありません。ただイチローが好きでした。セイフコ・フィールドに行ってきて、高まった気持ちを胸に盛大にポエらせて頂ければと思います。

 

セーフコ・フィールド

あいにくの曇り。それでも美しいセイフコ・フィールド

イチローとの出会い

そもそも野球を見ない僕は、日本でのイチローをあまり知りません。パワプロで「サクセスじゃないのにオールAに近い選手がいる」と思っていた程度です。むしろイチローは扱いづらいキャラでした。ミートが広くてパワーが中途半端にあると打ち損じが出やすいというの僕の自論です。ヒット狙いの選手はミートC、パワーCぐらいがちょうど良い。...話を戻します。

僕がイチローの試合を初めて見たのは、メジャー移籍後のオールスターゲームでした。当時の僕は中学校3年生。試合は学校の時間でしたが、野球部の同級生が「先生、お願い!イチローの打席だけ見せて!」と懇願しました。「第一打席だけだぞ」と返す先生。いま思うとこの先生も見たくて堪らなかったに違いありません(ちなみに野球部の顧問の先生でした)。そして、僕たちはイチローがランディー・ジョンソンから内野安打を打つところを目撃したのです。

 

 

イチローに興味を持つ

それから3年後、イチローメジャーリーグの年間最多安打記録を塗り替えようとしていました。当時の僕は高校3年生。学校へ行く前にテレビを見ていたのですが、イチローのニュースは毎日取り上げられていました。しかし、はっきり言って、僕は無理だと思っていました。たしか夏休みの終わった9月中頃に、イチローは一度無安打をやってしまいます。その時、ニュースのレポーターも「これで残り◯試合で◯本、1日◯本のペースでヒットを打たないといけません。厳しくなってきました。(※はっきりと数字を覚えていないが15試合で20本ぐらいの厳しい数字だったはず)」と話していたのを覚えています。ところがどっこい、その後イチローは5打数5安打, 6打数4安打とヒットを量産して逆境をひっくり返してしまうのでした。

 

 

そしてその瞬間へ。もうね、映画ですよね、これ。鳴り止まない歓声と拍手、駆け寄るチームメイト、前記録保持者のジョージ・シスラーの娘との握手、まるでひとつのショーを見ているようです。

 

 

イチローのファンへ

僕は2004年の記録達成をきっかけにイチローのファンになったわけではありません。 ファンになるのはそれから3年ほど経ってからのこと。当時の僕は成人して、社会人になっていました。仕事は個人宅への外回りの営業職、簡単な仕事ではありませんでした。「いま天ぷら揚げているから結構です!」何度こう断られたことでしょう。「マジでこの断り文句が使われるのか」などと思いながら、毎日16時〜21時の間は外回りをしていました。

夏は暑いし冬は寒い。業務の過酷さに加えて、なかなかのブラック企業だったので、酷いときは2ヶ月間休みがないときもありました。仕事の調子の良いときは、稼げせてそれなりに楽しい仕事でしたが、調子の悪いときはかなり辛いものでした。1日誰にも話すら聞いてもらえず、インターホンで断られ続け、会社に戻ると上司に激詰めされる。「売れるまで帰って来るな!」と、電話で突き放される日もありました。そんな職場だったので、モチベーションをいかに管理するかは多くの社員の共有の悩みでした。

「トッキー、良い本があるよ。」

そう声をかけてくれて、とある人に手渡されたのが、イチロー 262のメッセージという本です。

イチロー 262のメッセージ

イチロー 262のメッセージ

 

この本にはイチローがメジャーデビューから4年の間にした発言が抜粋して載せられています。特になにか解説があるわけでもなく、ただ淡々とイチローの発言が紹介されているだけなのですが、これが妙に心に刺さりました。一部を引用して紹介します。

こんなに苦しいのは自分だけか、と思うこともあります。それを見せるか見せないかだけの話です。みなさん、ぼくのことは、疲れていないと思っていませんか?

ぼくも、グラウンドに行きたくない日はたくさんあるのです。そのときには職業意識が出てきます。「仕事だからしょうがない」と、自分に言い聞かせるときもあるのです

グラウンドの上では、自分の築きあげてきた技術に対する自信、今までやってきたことに対する自信、「やりたい」と思う強い気持ちが、支えになります

僕はこの本を読むまで、イチローがこんなに苦しみながら野球をしているとは考えたこともありませんでした。メンタルをコントロールし、高いプロフェッショナル意識をもって野球と向き合うイチロー。一気にイチローのファンになりました。

それから毎日イチローのニュースを追いかけました。勝手にイチローをライバル視して、イチローがヒット2本なら、僕も2契約を取るまで頑張ろうと、仕事の目標にしたりもしました。他にも、mixiイチローコミュニティで実況しながら試合を見たり、「Road to 4256」というトピックでイチローのヒットを皆でカウントしたりとか。ちなみに、4256とはピート・ローズが残した通算安打数のMLB記録です。当時カウントしているときは遥か先の夢のような数字でしたが、本当に達成してしまうイチローは本当に凄いです。

仕事の営業の数字に追われていた日々の中で、イチローの安打数という他に意識を置く数字ができたことは本当に救いでした。また、イチローの野球への姿勢を少しでも見習おうと心がけて仕事をすることで、自分の中にも徐々にプロフェッショナル意識が生まれてきたように思います。職業人の理想像であり続けてくれたイチローには感謝しかありません。

 

最後に

特別アドバイザーに就任して試合にはもう出場しないということから、事実上の引退という声も出ています。マリナーズとの契約としては、来季試合に出場する可能性は残した内容になっているそうですが、僕も来年になって第一線へ復帰するのは難しいと言わざるをえないと思います。しかし、イチローは常々50歳までプレーしたいと公言していますし、チームに帯同しての練習は続けていくそうです。現在44歳のイチロー、今後どうなっていくのか、何をしていくのか、まだまだ目が離せません。最後の最後までイチローを応援していきたいと思います。ありがとう、イチロー

 

おまけ

オバマ前大統領がイチローの話をしているこのシーンがとても好き。

I talked to Ichiro and I said, now, how exactly do you throw that ball from in the outfield to home plate like a laser? He said, "Soft muscle." He said, "You don't need to be big." it was a very zen-like answer. He's an impressive guy.

レーザービームのような送球をどうやって投げるのか?というオバマの問いに対して、「ソフトマッスルです。大きな筋肉は必要ありません。」と答えたイチローオバマはそれを”まるで禅のような答え”とコメントしています。オバマにさえ認められるイチロー、素敵すぎる。

後、イチロー 262のメッセージ、イチローが好きな人には本当お薦めです。 未読の方はぜひどうぞ。

イチロー 262のメッセージ

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未来をかえる イチロー 262のNextメッセージ

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自己を変革する イチロー262のメッセージ

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