大学とオンラインコミュニティ

”人間は、「本能が壊れた動物」と言われております。人間は、本能という生物学的に固定されたプログラムのみに規定されるのではなく、取り巻く環境との相互作用のなかで、何かを学び新しい行動様式を後天的に獲得して行くのです。つまり、本来、人間にとっては「生きること=学ぶこと」と言っても過言ではないのです。私が「学習」というとき、こういう広い文脈で捉えております。”

 

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この文章は、エルム・ラボの主催者である酒井英禎さん(@elm200)から入会案内のメールで送られてきたものです。エルム・ラボとは「21世紀の大学」を目指し、インターネット上の教材で学習を行なうオンラインコミュニティです。

 私は社会人になって8年が経とうとしていますが、「大学に行きたい」という気持ちが年々強くなっています。そんなとき、Twitterでエルム・ラボの存在を知り、やや軽い気持ちで入会を希望したのですが、冒頭の返信メールに面食らいました。

「これはなんと刺激的な空間に出会えたのだろう」と、興奮したのをよく覚えています。”主な活動の場は、Facebookグループ”とのことだったので、「何が”いいね!”だ、そんなのでコミュニケーションが出来るか」と毛嫌いしていたFacebookに慌ててアカウントを作り、 今ではメンバーの皆様にせっせと”いいね!”を押し続けている次第であります。

 

私は大学というものに行ったことがありません。そのせいか、大学そのものに高い理想を求めている節があります。新撰組土方歳三は、”武家の生まれでないために武士へ強い憧れを持った”と言いますが、その気持ちが少しわかる気がします。また、仕事柄、広告業界という立場からではありますが、大学に関わる時間が一般の人よりは多くあります。オープンキャンパスに参加することや大学生と意見交換することも珍しくありません。しかし、その度に「私が求めているものは今の大学にはないのではないか?」そんな疑問を抱いています。

  • 意欲の高い学友と日々を学問に費やす
  • 優秀な方々と積極的に議論を行なう

このようなことを私は大学に求めていました。学生という責任を持たない立場で、なにも恐れずに優秀な方々と議論ができ、意欲の高い仲間と一緒に学習ができれば、なんと幸せなことであろうか。今でもその気持ちに変わりはありません。ただ、現実的にそんな環境に巡り合えるのはごく稀なのでしょう。特に、学友となれば事前に調べることが難しいですし、現在の大学には高い意欲を持った学生が少ないのはよくわかっています。

それに比べて、オンライン学習コミュニティには意欲の高い人が集まっています。”仕事をしながら空いた時間を学習にあてる人”、”新しい生活スタイルの実現を目指す人”、”際限のない知欲を持っている人”、それはもう様々です。そんな人たちが、小額とは言え金銭を払ってコミュニティを形成しています。これは”意欲の高い人が集まる”という点に、とてもよく機能していると実感しています。

大学の学費は比べることも出来ないくらいに高額ですが、自身で支払う学生は殆んどおらず、両親が支払っていることが大半だと思います。学生がそのことを深く心に留めていればいいのですが、残念ながら「大学までは面倒を見てもらうのは当たり前」という考えを持った学生も多くいます。そういった人は本気で学習したい人のノイズとなる可能性は非常に高いでしょう。

 

 

大学には”人と人との出会い ”という価値がありましたが、もはや費用対効果が合わない時代になったのかもしれません。数百万の学費を払って失敗すれば目も当てられませんが、オンラインコミュニティは数千円で済むので、さいあく失敗したとしても別のコミュニティに入り直すことが可能です。どう考えても人との出会いを求めて大学に行くのはリスクの高い非効率な方法だと言わざるを得ないでしょう。

 私は今の大学の価値は、精神的な部分は既になくなり、物質的な部分しか残っていないのではないか?…そう思うようになりました。大学には研究室や図書館など素晴らしい施設が多くあります。また、医学などの限られた人しか就けない職業を目指す場合は、間違いなく大学に進学すべきです。しかしその一方で、今までは大学にしかなかった知識がインターネット上で修得できるようになりました。近い将来には図書館の本が全てインターネットで検索でき、そのまま閲覧できる時代がやってくるでしょう。施設や資格を必要としないことが目的であれば、物質的な大学に行かないという選択がいずれ当たり前になると私は感じています。

  

私が所属するエルム・ラボは、既存の常識に捉われない人ばかりです。「定住することなく生活がしたい」と言えば羨ましがられ、「仕事を辞める」と言えば素晴らしいと応援され、「大学はいらなくなるだろう」と言えば同意されます。そんな人と一緒に学習することによって、これからますます私の価値観は変わっていくでしょう。そして、間違いなく学習の転換期である今を、どのように生きていくのか?その答えを見つけ出すつもりでいます。